Ti voglio tanto
bene
06/10/09
前回からの流れで、
英語圏ギーク女子文化におけるパラノーマルロマンスの系譜をまとめてみようかな、と思ってたんですが、ちょっとやそっとでは消化できない情報量の前にギブアップ。
「ヴァンパイアもの」については、RMGさんとこの記事がわかりやすいので、そちらを御覧ください。
>>
ヴァンパイア美形の系譜 (ReadMe!Girls!の日記・雑記)
60〜70年代初めのマキャフィリイやル=グウィン、ブラッドリーなどの硬派な社会的主張のある女流FT&SFの下地から、70年代半ば〜80年代のアン・ライス、タニス・リーらのようなフェミニズムのエロス方面を強く意識した方向へ行き、そこから更に
SF性やフェミニズム主張を希薄にして「萌え」に特化・拡散したのがパラノーマルロマンスなのかな?
以下、自分用覚え書
*アン・ライス
『夜明けのヴァンパイア』 Interview
With the Vampire (1976年)
*タニス・リー
『銀色の恋人』 The Silver Metal Lover (1981年)
*ロマンス小説の代表的な賞は
RITA(
Romance
Writers of America アメリカロマンス作家協会賞)と
RT
Reviewers'
Choice(
Romantic
Times BOOKclub magazine ロマンティック・タイムズ・レヴュアーチョイス賞)の二つがあって、RITAは92年、RTは90年頃からSF・FT系作品の賞が設けられています。
それぞれ初期は
Futuristic/Fantasy/Paranormal
Romanceとか
New Realityとか呼ばれておりましたが、後に
Best
Paranormal Romance賞の呼称に落ち着きました。
*TTRPG
ヴァンパイア:ザ・マスカレード/ワールド・オブ・ダークネスが1991年から。
*メアリ・スー判定テストが作成される契機となるくらいギーク女子の自己投影二次創作が盛況になった、ディズニー系の
Gargoylesは1994年から。
*ナンシー・A・コリンズ
『ミッドナイト・ブルー』 Sunglasses
After Dark が1995年から。
*
『バフィー 〜恋する十字架〜』が1997年から。
*1998年、パラノーマルロマンスのファングループが年間賞
P.E.A.R.L.(Paranormal
Excellence Award for Romantic Literature) 選定開始。
対象ジャンル内訳はBest
FANTASY/MAGICAL Romance(ファンタジー、魔法もの)、Best
FUTURISTIC Romance(未来もの)、Best
SHAPESHIFTER Romance(狼男など人外変化もの)、Best
TIME
TRAVEL Romance(タイムトラベルもの)、Best
VAMPIRERomance(吸血鬼もの)。
意外にもベスト・ヴァンパイア・ロマンス
賞は2006年新設。 以前は
OVERALL PARANORMAL(パラノーマル全般)にカテゴライズされてたのが、この年独立したらしい。初めは狼男の方が人気ジャンルだったのが逆転されたの??
*ハーレクイン社でパラノーマル専門レーベルの
LUNA創刊が、2004年。
90年代半ばから増殖し始めて、世紀末でジャンル内爆発、2005年頃から現在まで続くバブル期・・・て感じ?
個々の作品をちゃんと読んでいないので突っ込んだ論評はできないけど、オタ女の傾向は東西然程差はないような気がする。そこらへんの考察は次回以降に。
とは言うものの。ワタシはどこに出しても恥ずかしくない
人外萌貴腐人なんだが、メインジャンルはTF勇者ロボやおい、前ジャンルはDBのピッコロさん受、永遠のフェイバリットはバビル二世×ロデム。
菊池秀行の代表作は
『妖神グルメ』、佐藤大輔の代表作は
『レッドサン
ブラッククロス』、ジョージ・R.R.マーティンの代表作は
『ワイルドカード』と言って譲らず、TTRPGはワールド・オブ・ダークネスより
TORG(特にナイル帝国)を愛する人間。・・・・・・トワイライトとかのファンとは気ぃ合わん気がする。すごく。
付記1)私の出入りしているmanga/comics系ファンコミュ(複数)では、「トワイライト厨(screaming "Twilight" fans)マジうぜぇ」「あの吸血鬼萌女ども隔離しろや」「女オタがみんなトワイライトマンセーじゃないの!空気読まないニワカのお陰であたしらも迷惑してんだから!」「このコミュは平均年齢高いからトワイライト汚染(Twilight's
horrible influence)されてなくて和むわ〜」「いっや〜ギーク文化界隈も今まで色んな基地外を輩出してきたけど、トワイライト厨はまた一段ステージ上げてくれたよね(Twilighters
might have taken it to a new level)」・・・みたいな発言が結構あったりするんですが。
付記2)向こうの女ギークの苛立ちは、アレだ。20年以上も前から普通に戦国マニアの歴史小説読みで史跡めぐりが趣味だったのに、いきなり世間から「今ハヤリの『歴女』」のレッテル貼られて揶揄される理不尽と同じか。
付記3)でもそこで第一次ガンダムブームの頃のSF者みたいな了見の狭い態度を取ると、後年悲惨な事にしかならんのは歴史が証明してるから、踏ん張れファンボーイズ&ガールズ。
30年たってもSF者への恨みを忘れられない私が言うのもナンだが、"I don't
mess with you, you don't mess with me(人は人、我は我)"、ラヴ&ピースだぜ?
オマケ
・・・ところで、アメプロのギャングレルは1993年ごろから吸血鬼ギミックで押してるんだけど、これも吸血鬼萌女性客受けを狙ってたりするんでしょうか。いや、「ゴス」「金髪」「ロン毛」「フリルブラウス」で、記号的には「お耽美」だし。
フィメールリーダー開拓史(後編)
09/09/09
そんな訳で、大々的に展開したTSUNAMIが2004年5月をもって終了後、マーヴェルの女性向け路線は、もうちょいフットワークの軽い形で探り探りに続いてゆくのであります。
前述の、フィオナ・アヴェリーによる、一般向け少女スパイダーマンのアラーニャ(2004年 -)。
TSUNAMI 打切と入れ替わりのように始まった、Mary
Jane (Aug. 2004 - Nov. 2004)と続編のMary
Jane: Homecoming (Mar, 2005 - Jun, 2005) Spider-Man
Loves Mary Jane (Dec. 2005 - ) 。
TSUNAMIのメインライターだったSean McKeeverと日系アーティスト
Takeshi Miyazawa コンビによる、アクションよりも学園生活中心のスパイダーマン。
少女マンガというより、ドラマのSmallville
(2001年)ヒットの影響を受けたヤングアダルト学園SFって感じですが、スパイダーマン本来の世界観にマッチしていて、それなりに好評を得て続いてます。
その頃、日本製少女マンガの翻訳ラッシュに、先行きのコンテンツ不足を懸念したか、Tokyopopが自社製作オリジナルmanga路線を展開(2005年
-)。
翌2006年からはDCコミックスが少女向けグラフィックノヴェルのMinx
ラインを展開 (May
2006 - Sep. 2008)。
マーヴェルはといえば、2006年に、ストームとブラックパンサーのアフリカ系ヒーロー同士の結婚という、アフリカ系読者人気を意識したイベントを仕掛けます。
この際のミニシリーズStorm(May,
2006 - Nov. 2006) のシナリオ担当は、アメコミ業界人ではなく、オシャレな都会派ロマンス小説で人気のアフリカ系アメリカ人作家、エリック・ジェローム・ディッキー。(邦訳は角川書店『ミルク・イン・コーヒー』有)
二人の結婚式はBlack Panther # 18で描かれますが、この際ストームが着たウェディングドレスは、
著名な衣装デザイナーのShawn Dudleyがデザイン担当しています。
明らかに女性受けをねらったイベントですねコレ。
アメコミは肉体描写はすばらしくても、私服のデザインが残念なものが多いので、こういう試みは歓迎します。
2004年にウィリアム・ツッチーがSHIのミニシリーズでアナスイと提携して、作中の衣装をすべてアナスイのプレタポルテで統一したりしてた先例もあります。(ちなみにツッチー先生はファッションイラストレーター出身)
そういえば日本でも、さらヤマの森雪の私服がハナエモリ、バルディオス映画版のアフロディアのドレスがニコルの松田光弘のデザインだったなぁ。
付記)当時アニメージュの折込ポスター裏で、松田さんが003やセイラさんの私服デザインをする企画があった。クロゼットをひっくり返したら出てくるはず。
(あと、2006年には
New
Mangaverseが出たけど、イマサラ感強くてあんまし話題にはなりませんでしたw)
付記)力いっぱい失念していましたが、2006年には女性編集者
Molly Lazerさん担当で色恋沙汰中心の短編シリーズI
(Heart) Marvel全5イシューがありました。その内の一冊Marvel
AIは、ライターが
C.B. Cebulski、作画が日本の漫画家・イラストレーターのたにぐち智子、小林系、toga
/ togatsuko。ネットではちょっと話題になったけど、TPB出てないとこみると、売り上げ的にはどーだったんだろ?
*
しかしまぁ、それはそれとして。
恋愛・結婚イベントで女性客を釣りたいんならさ、恋愛の成就する過程や、結ばれて後の関係の描写にも気を使ってほしいんだが。つか、女性客が恋愛ものに求めるのって、そーゆーモンでしょ?やみくもにラブシーンつっこめばいいってもんじゃないのよ。
新路線になる度に、ちょっと前のエピソードで死線を越えて愛を確かめ合った恋人たちが、とってつけたような理由であっけなく破局。それまでそんな素振りも見せなかったキャラ同士が、突然生きるの死ぬのレベルの熱愛カップルになったりするような雑な展開はやめようよ。
90年代のサイロックの扱いはホント酷かった。ローグもかなり。
そんなんだから数少ないファンガールにまで愛想つかされんだよ!(←思い出し怒り)
ストームの恋愛・結婚イベントなんて、商売の都合で突然多量の後付けエピソードでエクスキューズして無理やり盛り上げてるのがミエミエで、キャラクターを大事にしてるようには到底見えなかったよ。
元彼・フォージの扱いも酷かった・・・。あんなキャラを貶めるようなエピソードで無理やり盛り上げなくたっていーじゃん!
|
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GIRL (原題:Skim 2008年)
イグナッツ賞受賞のカナダ産少女向けグラフィックノヴェル。
原作者のMariko TamakiはMINXタイトルのEmiko Superstarの原作も担当している。 |
どうせロマンス作家を招聘するなら、ノーラ・ロバーツあたりを呼んでくれば?この人バットマンをモトネタにしたビジランテが登場するNight
Shadowというパラノーマルロマンス作品も書いてるし。「女にとっての理想の男」というのがどういうものか見せてくれるんじゃないでしょーか。
前記事でもちょっと触れましたが、女性向けエンタメが要求するカタルシスは、男性向けのそれとは相当異なっているんだから。(男性性が女性性の前に屈服する、ユニコーン神話的なもの?)
これもちょっと前に書きましたが、「なんだかんだ言いつつも、結局はアメリカン・マチズモが基盤となっているヒーローアメコミ」に対するカウンターとしてニッチ市場に食い込んだのが日本の少女マンガであり、少女マンガ家志望のOEL作家に好き勝手に描かせると、どうしてもそこらへんに対する問題意識というか、憤懣がモロに出た作品になりがち。(共感はするけど、エンタメとしてはちょっと・・・)
一方、企画主導型の作品『プリンセス・アイ』
や少女マンガ版 X-Men は、メアリ・スー的な少女の妄想奉仕媚び媚び厨2作品になる。(ショーバイでやってる分、本物の厨2よりタチ悪ィ)
かといって、「ジュブナイル」「ヤングアダルト文学」
としてキッチリ仕上げたMinxは、「地味・・・」「これをあえてコミックでやる意義は?」と市場からスルーされ、 2008年9月をもって休刊。(現物は読んでないけど、ナード少女の自意識を描いたような作品ばっかで、華のない印象。わざわざ手に取ろうという気がおきない・・・)
そうこうするうち、翻訳マンガ過剰供給によるアタリショックと原油高騰、提携先大型書店の経営危機の相乗効果で、2008年夏、北米mangaバブル崩壊。
一時はあんだけブイブイいわせてたTokyopop、見る影もなく衰退。更に北米発21世紀世界恐慌で経済しっちゃかめっちゃか。
マーヴェルは2007年末にDel
Rey Manga と提携し、少女マンガ版
X-Menの企画を公表していたが、制作は遅れに遅れ、実際に発売されるのは、既に世間はmangaどころじゃない2009年8月。大して話題にもならず。
*
ところで、その2008年冬、インディ系配給会社Summit Entertainmentの低予算映画Twilight
(邦題:トワイライト〜初恋〜)が女性客を中心に大ヒットを飛ばします。原作は英国の女性作家ステファニー・メイヤーのヤングアダルト小説『トワイライト』
シリーズ(2005年
-)。監督も女性。
原作はメグ・キャボットの『メディエータ』シリーズ等と同様に、ギーク系女子に人気のパラノーマルロマンス小説。
非チアリーダー系の陰のあるヒロインが、絶世の美少年ヴァンパイアから「運命の恋人」として純愛をささげられるという、「ネクラ乙女のお耽美な夢想」をこれでもか!というくらいに徹底して具現化した作品。
女性向けの「吸血鬼ものパラノーマル・ロマンス」は、英語圏では溢れるほど生産されている人気ジャンルで、トワイライトはその中でも設定自体はひねりのない超ベタなものですが、ディティールの作りこみというか、ぶっちゃけ「萌え描写」が優れていたのが頭二つ三つ抜け出た理由でしょう。
私はここの試写会レポートを読んで、「君望」体験版騒ぎを思い出しましたww
この系統ではTVドラマシリーズ『バフィー
〜恋する十字架〜(1997年 - 2003年)』
が先行してヒットしていますが、Buffy
the Vampire SlayerはDark Horseコミックス社制作のコミック版が1998年から現在まで続く長期シリーズになり、アメコミ業界としては珍しく少女読者を獲得しています。
スヴェトラナ・シマコヴァの『ドラマコン』第3巻冒頭のバフィー談義を読むと、アメリカのオタ女子界ではバフィーが特別なポジションにあるらしいことが見て取れるんだけど、どういうニュアンスなのかまではわかんない。
同じTokyopopからも、エレン・シュライバーのヤングアダルト小説 『ヴァンパイア・キス』
原作、モーニング国際漫画賞受賞のOEL漫画家remが作画を担当したVampire
Kisses: Blood Relatives
(2007年
-)が刊行されています。
TVアニメ版『BLOOD+』(2005年)がああいう「逆ハーもの」になったのは、そこいらへんの女子人気をあてこんだせいなんでしょうかね。・・・思いっきり失敗してましたけど。
当然マーヴェルでもぬかりはありません。
女性作家ローレル・K. ハミルトンの『アニタ・ブレイク』シリーズ
原作のAnita
Blake Vampire Hunter (2006年 - )。
原作はヤングアダルトではなく、成人女性向けパラノーマルロマンスの人気作です。メキシコ系女性のヴァンパイアハンターが、イケメンのフランス人ヴァンパイアロードと一途な人狼青年に求愛されるという設定。
女子向け最強コンテンツ候補として、Twilightの漫画化権は結構な奪い合いの末、Yen
Press が獲得。コリアン漫画家Young Kim作画による、えーと、この場合OEL
manhwa っていえばいいの?になる予定。
そのような状態ですので、アメリカのコミック業界では、ちょっと前まではギーク女子受けパラノーマルロマンス要素のある作品は必死に「shoujo mangaファンにもアピールする内容ですっ!」て営業してたのに、今では「Twilightファンにおすすめ!」の宣伝文句が付くんだよ。ゲンキンだなっ。
そんな訳で、マーヴェルヒーローを一般女子に売り込む努力と共に、非マーヴェルユニバースの原作付女性向けコミックのライン化も探り探りで続けられています。
その尖兵が、ジェーン・オースティンの古典ロマンス小説『高慢と偏見』のコミック版 Pride
and Prejudice (Apr, 2009 Aug, 2009) 。英国リージェンシー小説界の誇る元祖ツンデレヒーロー・ダーシー氏×元祖プレーン・ジェーン型ヒロイン・ベネット嬢のロマンスの登場だ。一足飛びにそこいくか、マーヴェル。まぁ、女性向けエンタメの古典から学ぼうという姿勢は大変結構ですが。(原作料払わなくていいしネ!)
そんな訳で、マーヴェル女性読者獲得の尽きせぬ夢を、主にカサーダ体制以降を中心にまとめてみましたが、今後ディズニーからノウハウを吸収して様々な企画が世に出るのか、ディズニーの「男性向け部門」として特化の道を進むのか。mangaの帝国在住アメコミ好きボンクラ貴腐人としては、ニヨニヨしつつ見守っていきたいと思うのであります。
フィメールリーダー開拓史(中編)
07/09/09
| -- Given that Tsunami's mission
statement includes appealing to the currently untapped female
audience,
and with the launch
titles featuring only one prominent female character (Mystique),
was any thought given to reprinting Spider-Girl content as a companion
to the line??
(Tsunamiのターゲットがアメコミファン以外の女性で、創刊ラインナップで女性キャラが主役を張っているのが一作だけということは、Spider-Girlの再刊も同じラインと見なしてもいいんでしょうか?)
Quesada:
No. Outside of letters from grown forty-year-old men pretending to be girls
in junior high school, I don't have any
concrete evidence that Spider-Girl is actually reaching a large
female readership.(いーえ。Spider-Girl関連で手紙をくれるファンなんて、女子中学生の皮をかぶった40男くらいのもんですよ)
|
当時のカサーダ総編集長(以下、「Qちゃん」)は、映画版に合わせた設定リセットUltimateシリーズで新規読者を取り込みつつ、Marvel
Knightsで明確なマニア向け「青年誌」展開、帰参したクレアモントらとともにgdgdになってしまった本線シリーズを整理・・・・・・・・・こうして簡潔に記述すると、Qちゃん、基本的には何一つ間違ったことはしてないな。でもあの頃、実際出来上がったモンをリアルタイムで読んでた人間には、Qちゃんがタイトル私物化して迷走してるようにしか見え・・・げふげふ。
前回ちょっと書き忘れてたんだけど、マーヴェルの女性読者獲得大作戦には、女性作家起用ラインというのもありました。
例えばこの、ライターがフィオナ・アヴェリー(Topcowでライジングスターズやトゥームレイダースのスピンを書いてた人)、カバーアート担当はジュリー・ベル(バッドガールものブームの頃にインディで色々セクシーなペイントアートを描いてた人)のRogue
- Marvel Icons(2001年)とか。
フィオナ・アヴェリーさんは新生Amazing
Fantasy 誌(2004年 -)立ち上げ時のライターとして、新しい少女ヒーローの Aranaをプロデュースしたりもしてましたな(でも私は7号から登場のCarmilla
Black のが好きなんや〜〜)。
結局コアなアメコミオタ受け方向に行った本家のSpider-Girl に比べると、「ヒーローコスチュームを着ない少女スパイダーマン」のアラーニャは、明らかに一般少女読者獲得戦略キャラクター。
単独タイトルも創刊されて、他タイトルにもゲストで顔出しして、アメコミ読者にはそこそこ好評なんでしょうかね。でもそれが一般読者獲得につながってるかというと?ですが。
ここら辺の地道な試みはずっと続いていて、2008年サンディエゴ・コミコンのパネルディスカッションWomen
in Marvel で公表された、シナリオ:Valerie D’Orazio 、アーティスト:
Irene Flores 、カラリスト:Emily Warrenという女性作家トリオによる Cloak & Daggerのミニシリーズ企画とかに繋がっていく訳です。
イレーヌ・フローリス先生は、TokyopopでパラノーマルロマンスものOEL『Mark
of the Succubus 夢魔ミーヴ 〜ファースト・ラブは命がけ!〜』の作画をしてた人。ディグレやリボーンのファンで、スタトレやおい好きの腐女子であらせられます。最近はヘタリアに激ハマリしていらっしゃる模様・・・というあたり、非常に今風の人選ですな。
付記)NYX:
No Way Home(2008年)やDark
Wolverine(2009年) 脚本担当のマージョリー ・M ・リュウは、「Romantic Times」誌のベストパラノーマル・ロマンス賞受賞作家で、虎に変身するヒーローが出てくるパラノーマルロマンス小説も書いている。やはりここら辺隣接ジャンルなんだな。
*
それはさておき。
対象読者をはっきりさせたラインを作って、各々新規読者層の開拓に励みましょう・・・という基本方針の下「とりあえずmanga読者のティーンエイジャーにアピってみました」なMarvel
Mangaverse(2002年)は、「mangaを読んでる、違いの分かるオイラ」にアイデンテファイしている選民思想のOTAKUからは、
「mangaとanimeを混同してんじゃねーよタコ。つか、なんだその80年代センスは」
と跨いで通られ大コケ。
闇雲にパワードスーツと猫耳娘出しゃいいってもんじゃないんだな、と学習したQちゃんが、2003年に大々的に打ち出した企画が、TSUNAMI。
TSUNAM創刊アナウンス時のQちゃんの言。
Manga is exploding and reaching readers comics have been having trouble
reaching since, well, since the dawn of comics. To ignore this influx
of young readers, especially the young female reader, is just foolish.
(Manga は大ブームで、しかもコミック史の黎明以来、取り込みに手こずり続けて来た読者を獲得しています。若い読者、特に若い女性読者の参入を無視する訳にはいきません)
対象読者は、mangaファンの13歳の子供。特にthe
young female reader。
「OEL manga」
を 作るのが目的ではなく、 Tokyopop と Viz が翻訳mangaの販売で確立した、
「13歳の少女がBordersや
Waldens
、
Barnes & Nobleなどの一般書店でダイジェストサイズ(B6判)のTPBを衝動買いする」
という購入パターンに乗っかれるフォーマットの商品を作ろうというのが基本コンセプト。
なので、通常のB5サイズ月刊タイトルを6冊刊行した時点で、即TPBを一般書店におろす。しかもTPBは"Marvel
Manga format"と名づけたB6判。一般書店のmanga売り場に置いてもらう為のフォーマットです。
それ以前にも、今は亡き(そしてディズニーに買い取られてそのまんまな)Cross
Genコミックスが"traveller
editions"という小型単行本を出してましたが、当時、このサイズ問題は結構重要でした。
2006年に、Bandai Entertainmentと提携したTopcowプロダクションが、Witchbladeの初期エピソードを、Witchblade
Tankobon 版 として表紙にBandaiのロゴを入れたB6判サイズのTPBで出しなおしたら、それまでのTopcowの固定客以外の若い女性読者が増えたんだそうな。
「フォーマットと売り場を変えないと、内容以前にターゲットの目に止まらない」
ってことで、この判断自体は一応良しとしましょう。
で、肝心の内容。
創刊時のラインナップで、従来のマーヴェルユニバースのキャラクターと全く関係のない完全新シリーズは、Runawaysのみ。後は既成キャラの若返り設定違い。
メインターゲットである、ヒーローアメコミに偏見をもってる読者は、これじゃ内容以前にタイトル見ただけで避けるのでは?
特にNamorは、当初日本人アーティストの榊原瑞紀が作画担当する予定だったのが、間際になって「やっぱり大きい企画だから、有名アーティストじゃないと」ということで降板。
普段アメコミ読まない読者にとってはアメコミの有名アーティストの起用はウリにはならないのでは?
・・・結局、旧来のコミックブック専門店からの予約数確保を無視できなかったってことでしょうか。
TSUNAMIをマーヴェルユニバースへの導入役にしよう、という色気が出すぎて、いまひとつ中途半端な企画になってしまったような。
企画立ち上げ時にQちゃんが
It’ll have the same feel as traditional
shoujo manga
(伝統的な shoujo manga
と同じような感覚で描かれ)
って言ってる通り、
UDONスタジオ作画のSentinelをのぞいて、作画はモダン系アメコミアートが基調ながら、mangaを意識したコマ運びで、人間ドラマ中心、心理描写にページ数を沢山使うというスタイルなんだけど・・・・・・無駄ゴマのお陰で話が進むのが遅いんだ。
「5分で立ち読みできるような内容の薄い本に、金出したくねーよ」
という声もあったり。
しかし、まぁ、
「mangaの文法を取り入れたマーヴェルヒーローコミックスを、ダイジェストサイズTPBで一般書店のmanga売り場で販売」
というコンセプト自体はそれ程酷い思い付きではなかった・・・・・・が。
現実の市場でどういう事がおこったかといいますと。
1. 無駄ゴマ多くて話の進行遅い。一話の内容薄い。
2. あらかじめ「6話まで話が溜まったら、即単行本出るよ」とアナウンスされてる。
3. だったら単行本でまとめて読んだ方がいーや。
4. 月刊タイトル売れず、当座の資金回収できず。
5. 単行本、最後まで出せないかも・・・つか、シリーズ打切りで、いい?
と、いう訳で、アメコミの歴史に
"waiting
for the trades" (単行本待ち)
"trade waiters" (単行本待ち読者)
というジャーゴンが加わる契機となったのでございます。
(それ以前にもあった言い回しかも知れないけど、私はTSUNAMI騒動で始めて目にしました)
書店で単行本を買ってシリーズに触れた読者が、続きを読むためにコミックブック専門店で月刊誌を買う。できればそのついでに他のマーヴェルタイトルも手にとってもらう・・・というサイクルを期待した企画だったのに、それ以前の段階でつまづいちゃった訳です。
どうにか出した単行本も、マーヴェルの営業が一所懸命「mangaコーナーに置いて」って頼んだのに、書店員さんにグラフィックノヴェルの棚に置かれちゃったり。
(でもさ、「マーヴェルコミックスのヒューマントーチ」なら、アメコミの棚に置くよね普通)
日本の漫画だったら、「雑誌掲載の段階でアンケートが悪くて、単行本が出ないまま連載打切り」
ってとこですかね。
そもそもが書店売り単行本の為の企画なのに、専門店での月刊誌の予約がとれないというのを理由に打切りってのも変な話なんですが・・・。
アテにしていた「shoujo manga 読者」ですが・・・いや、どう見てもこのラインナップ、少女マンガじゃないよねぇ。
多分、会議を重ねるうちに、当初の企画からどんどんズレていっちゃったんじゃないかな。
(
つか、The
Crewって、はじめからTSUNAMI用の企画なの?別企画のを無理やりネジ込んだんじゃない?)
社内で企画をつめてる限り、こういう風になってしまうという反省が、後のDel
Rey外注版Shojo
manga style X-menに繋がってるんでしょう。
そんな訳で、約一年間の奮闘の末、TSUNAMI終了。
New MutantsはそのまんまAcademy
X のイントロになり、デリケートな青春群像ものとして良く出来ていたRunaways は、メイン・ユニバースに加えられて、シリーズ存続。
「出世」ってことなんだろうけど・・・・・・ランナウェイズは、ニューミュータンツやジェネレーションXと差別化する為にも、マーヴェルユニバースとは隔絶した形で、独立したヤングアダルトSFコミックとしてブランド化した方が良かったんじゃないかなー。
最近、TSUNAMI時代のエピソードを改めてB5判TPBで出しなおしたりしてるって事は、正式に対象読者をヒーローコミックファンに設定しなおしたのかな?mangaバブル崩壊で、ダイジェストサイズ単行本で出すメリットがなくなったってのもあるけど。
個々のタイトルのファンは「もうちょっと踏ん張ればいいのに・・・」
と嘆きの声をあげつつも、「でも、親方ワーナーなDCは利益率の悪い実験的ラインも維持できるけど、今のMarvelは企業としての体力ないから、仕方ないよね(メソリ)」と涙をのんだのでした。
この頃ゲイマン先生のMarvel
1602も予定回数から大幅短縮で終了。DCなら普通に満了して、TPBがロングセラーになってるようなタイトルだよね・・・マーヴェル弱すぎ!とマニアは愚痴ったものです。
(この時期マーヴェル編集部内で政変があったのも影響しているのかどうか)
今回のディズニーとの合併で「親方ABC」となったマーヴェルは、DC並みの企業体力を得ることになるのですが、さて・・・?
TSUNAMIの話で力尽きたので、つづきは後編で。
付記)女性向け企画じゃないけど、manga系ではトミィ大塚、雪村誠起用のX-Men:
Ronin (2003年)のミニシリーズもありましたっけ。
フィメールリーダー開拓史(前編) 04/09/09
ここまで爛熟したジャンルが何故跡形もなくなってしまったかというと、コミックスコードと現実世界のセックス革命と1950年代出版不況が絡み合った結果でしょうか。
保守的な性道徳を押し付けてくる表現規制と、現実の女性解放運動の流れとの乖離(あと、コミック業界は男性中心社会なので、描かれる恋愛像が男のファンタジーを反映しがちってのもある)。そこにトドメの出版不況。
表現規制のお陰でクライムストーリーや現実的なエロス表現を含んだロマンスなどは骨抜きにされたものの、アメリカンコミック業界は規制をバネにファンタジー&SF方面に表現を拡大し、50年代半ばから70年代にかけて、スーパーヒーローコミックのシルバーエイジを迎えます。
各社ロマンスものも70年代半ばくらいまでは細々と続けていたものの、どうしても主流は売れ筋のヒーローコミックに。
とはいえ、Charlton Comics 社のジャンル末期の作品群なんて、表現として成熟・洗練されて、カバーアートなんかすっごいオシャレ。
遠い憧れだった、豊かで陰りない夢の国・アメリカの青春・・・って感じだよな。往年の西谷祥子の少女マンガのような世界だ。
こういう流れが一旦切れてしまったのは、なんとも残念。
ちなみにハーレクイン社が北米でペーパーバックのロマンス小説の販売をはじめたのが50年代初頭、急成長が70年代半ば。80年代初めにはペーパーバックロマンス小説のバブル期が来ます。ロマンスコミックの対象読者はそっちに流れた訳ですな。
その後も各社時々思い出したように「女性読者獲得」に目配せしてみるものの、流れは止まらず。80年代も半ばになれば、コミックス・コードの規制なんて有名無実化してるし、色々なタイプの作品も出せるはずなんですが・・・。
作品内容が男性向き中心ってのも理由ではありますが、コミック販売がスタンド売りから専門店のダイレクトマーケットにシフトしたのが、すごく大きいんじゃないでしょーか。
大概のコミックブックストアって、女一人で入れる雰囲気じゃないし。
(非オタクの女性が「とらのあな」に入れないのと一緒)
そんなこんなで女性客獲得は半ば諦めつつ、確実なマニア向け商売をつづけていたら、作品の表現としての質は高くとも、いつの間にやらマニア中心の狭くて濃い市場に成り果て。将来の顧客となるべき子供客も減少し、このままでは先細って市場消滅?という事態に。
マニア偏重、子供おいてけぼりの結果起こった、80年代日本のアニメ冬の時代と同じですがな。
そして90年代のコレクター・マニア層のみを中心としたアメコミバブル。
株屋によるマーヴェルの狂乱運営とその破綻、IMAGE維新軍団の空中分解、ATARIショックも真っ青のインディコミック出版社の連鎖倒産・・・と、90年代半ばから深刻なアメコミ冬の時代到来。
そんな中、ヨーロッパでのブームから十年程遅れて、日本製mangaが北米に本格参入してきます。
アメリカのマニア世界では日本製サブカルチャーのムーヴメントは今までに何度もありましたが、今回はニンジャや怪獣、ロボットだけでなく「少女マンガ」という新顔が流入。市場のスキをつく形で勢力を伸ばします。
マーヴェルをおん出て独立していたアーティストのカサーダが、マーヴェル建て直しの為に、なんと総編集長として古巣に召還。しかし中々成果はあがらず試行錯誤の日々・・・。
アメコミは売れ行き不振なのに、なぜかジャパニーズmangaはアメコミを見向きもしない若者や子供や女性に売れている。女性はコミックを読まないものと諦めていたのに。人類の半分は女。フィメールリード・タイトルを開拓できれば市場規模は一気に2倍!小さなパイの奪い合いの日々からすれば夢のよう。
mangaに学べ!・・・でも、一体どこら辺を取り入れればいいの?作品内容、アートスタイル、ビジネスモデル・・・?
ま、とにかく実験的にmangaスタイルのマーヴルヒーロー本を単発でだしてみまショ。