蜘蛛之巣城 本丸

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オタク歳時記
 
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色々ツラい事があって、今は敬愛する猛者ネット論者の文章を読んで己を鼓舞してるトコ。
イソノ武威
 a.k.a. ITOMARU
 
乙女の確証バイアス 03/06/09

「(自称)やおいのパイオニア」の死を契機にボンクラ貴腐人の一人として、つらつらと。

そもそも既成キャラクターの「強いモチベーション」を、一々「恋愛感情」 に捻じ曲げて読み替えるというのが「やおい」の醍醐味な訳ですよ。それを息をするがごとく自然にやれるのが、「腐女子」という選ばれし民wな訳。
言ってみれば、「古代文献は暗号である」とか「なんでもかんでもユダヤの陰謀」みたいな確証バイアスで原典を組み替える行為で、自覚してやってるなら知的な(?)お遊び、本気なら電波ですがな。

で、私はそういう意味での「やおい」は好きだが、ジャンルとしての「ボーイズラブ」には興味がないし、「耽美趣味」もまったくない。リベラリズムの観点から、同性愛者に対する偏見や差別には反対するが、自分自身は性的にはストレートだ。

ちなみに私は新興宗教や偽科学、詐欺商法のウォッチャーでもある。・・・つまり、現実の上に舌先三寸で「もう一つの現実」を創造してみせる技に惹かれる性があるのだ。
(そういえば、私は大学は法学部だったのだが、越境履修で文学部の比較宗教学をとっていた。ルールやシステムに惹かれると同時に、「非合理に惹かれる人間」に対する興味も強いというか、「非合理を核にしたシステム」に興味があるというか。人間にとって合理ってなんだろう?という疑問が常にあるというか)

*

私は数年前に、冬木るりかの『アリーズ』を褒めた文章を書いたことがある。
「恋」によって世界がくつがえされる快感こそが「少女漫画のセンス・オブ・ワンダー」である
という話。

その時は長文になりすぎるのを避けて割愛したんだけど、アリーズで感心したエピソードのひとつに、ラスボス・ゼウスの忠臣である戦女神アテナとヒロイン・ベルセフォネの対決シーンがある。
「戦い」の化身である女神アテナと、「愛されし娘」「恋する少女」でしかないヒロインでは、まともに戦闘しても勝ち目なんかない。どうやって勝たせるのかな、と思ったら、これがすごい画期的(少なくとも私は類例を見たことがない)。

ヒロインはアテナに自分の感情を同調させて、相手の戦意を奪うのだ。
ヒロインの悲しみという感情の圧力に内面を占領された戦いの女神アテナは、ボロボロと涙を流しながら、「おまえはこんな感情に耐えていたのか」と屈服する。
アテナは大神ゼウスに心からの忠誠を捧げ、その大儀を世界を救う正義として信奉してる。ゆるぎはない。にもかかわらず、無力な少女の悲しみという感情の前に屈してしまうのだ。
付記)文庫で確認してみたら、結構ディティール違ってた。ゴメン。
肉体を失ったアテナがベルセフォネの精神を乗っ取って支配しようとしたけれど、ベルセフォネの感情の圧力に負けて弾き出された・・・という流れ。まぁ本質的なトコは同じですが。


(全世界の命運をかけるレベルの)野心・忠誠心・正義・理想<<<<<<ひとりの少女の恋心

下手な描き方をしたら、噴飯もののトンデモだ。というか、少年誌や青年誌では使えない技だと思う。
このエピソードが噴飯どころか、ヒロインを最高に輝かせる場面として機能しているのは、『アリーズ』という作品が「徹頭徹尾少女マンガ」だからだと思う。
少女マンガの絵作りと文法。何より根本的価値観・思想が一ミリのブレもなく「潔いまでに見事な少女マンガ」だから、すさまじい「少女マンガならではのカタルシス」場面になっているのだ。
(現実的な国家や軍隊や企業とは関係ないファンタジーだというのも重要)

「徹底した少女マンガ世界」において、少女の想いが世界の命運と等価のものとして扱われるのは、正しい。この上もなく、正しい。

現実の社会という場所では何の価値もないし斟酌もされないが、しかし「少女の濃密な心理」というものは確かに存在する。それもまたこの世界を構成する大事な一部なのだ。
というのを、あらゆる形で描いてきたのが日本の少女マンガなのだ。
(海外で日本の少女マンガがブームになったのは、今まで向こうのコミック業界では「少女の心理を描くこと」が商業漫画として成立すると思われていなかったが故の、発見の驚きってのが大きいんじゃないでしょーか。だからshojomanga X-Menとかいってるマーヴェルは勘違いもいいとこなんだってばよ)

*

ハーレクインロマンスの黄金パターンに、健気なヒロインが誤解から傲慢セレブなヒーローに性悪女あつかいされて、散々侮辱されイジメられた挙句、クライマックスの少し前あたりでヒーローが誤解に気づいてハッピーエンドというのがある。
私はそーゆーのは、「何でそんな情報リテラシーのない奴が大会社の社長だの君主だのをやってられんだ。んナ器の小さい男なんざ、こっちから願い下げだぜベラボーめ」 とか思っちゃうんだが、そのテが好きな人に言わせると、「ラブシーンよりも、誤解に気づいたヒーローの懺悔タ〜イムが最高に楽しみ」なんだそうな。

「思い込みで君を傷つけてすまなかった!」「君の事を性悪女だと思い込んでた間も、君に惹かれていく自分を止められなかったんだ!」「そんな自分に対する怒りを君にぶつけてしまったんだ!!」「ぼくはなんて愚かな男なんだぁ!」
・・・みたいなww

それは多分、男性的な力(権力財力社会的地位及び雄としての性的優越性)の権化であるセレブ男が、「恋(感情と性衝動という非理性的な力)」の前に屈服する姿を見ることで、女としては非常に溜飲が下がるんじゃなかろーか。
つまり、アリーズがぶちかましてくれた「少女漫画のカタルシス」と基本は同じだ。

クソッタレな現実と格闘した一日の終わりに、「傲慢セレブ懺悔ものHQ」を読んでスカッとしてから眠りにつく。
なんかスッゴく健康的で逞しい女道な気がしてきたぞ。

優れた女性向けエンタテインメントを成立させるには、単に一つのカップルの恋愛成就だけではなく、その背後に
女性性の男性性に対する勝利を幻視させるのが、要件なんじゃないかと。
(だからshojomanga X-Menとかいってるマーヴェルは以下略)

*

んで、ぐるっと回って最初にもどる。
腐女子的確証バイアスによる読み替えってのは、基本的には男性原理に則って回っている物語世界を無理やり「女の世界」に引き寄せる作業な訳だ。女のナルシシズムで読み替えちゃう訳ね。

で、さ。ここんとこ、ネットで私が完全に興味をなくして読んでなかった80巻台以降のグインの評判を拾って、シミジミ思ったんですけども。
栗本薫ちゅーのは、結局「ファンガール」から一歩も出られなかった人だったんだなーと。
ハッタリの効いた壮大な初期設定や伏線をぶちあげて話を始めても、結局「自己愛を過剰投影した特定キャラクターの色恋沙汰」に主題は収束し、他のキャラクターや世界はカキワリと化してしまう。
恋愛といってもあくまで「やおい」だから、まともな「他者」 とのエロスを介した人間関係じゃなくて、あくまで女のナルシシズムでしかないわけで。
本当のところは、軍事や政治のような「男の世界」に興味はなくて、あくまで書きたいのは「私、私、私」 な人だったのね。

(ちなみに日本の武士団における衆道や古代ギリシャの少年愛は、「社会システム・権力システム」の一部だ。そういう意味でも「男の世界」なので、歴史的なモノホンのソレに、腐女子妄想の介入する余地はない)

初期設定にダマされてた古くからの読者が如何に嘆こうが、本来の作家性、本心からのモチベーションを全開にして書くと、あの「おかわいそうなナリス様サーガ」になってしまうのは必然であり。
三国志的諸国興亡の歴史とその裏にある宇宙的規模のスッタモンダ<<<<<<誰にも「本当の自分」を理解してもらえないナリス様の孤独

これが同人で展開するだけでは済まずに正史にまで侵食してくるというのは、「意識的確証バイアスによる思考の遊び」ではなく「マジもんのトンデモ陰謀論」の域だわな。
・・・アリーズのように少女マンガの枠組みで展開されててくれれば、そういうのも良かったのかも知れませんですけどねー。
(少なくとも初期設定にダマされて後々悲憤慷慨する読者の絶対数は少なくなっていただろう)

文庫本にして130冊に及ぶ壮大なメアリ・スーを商業ベースで出せたんだから、主観的にはとても幸せな作家人生だったんだろうけど、ね。

・・・ほんとに思いつくままつらつら書いたから、いまいち論旨が飛び飛びなんだが、時事ネタなのであえてこのまま出す。

(余談ながら、ついでにパロディとしての読み替えじゃなくて、素で「社会的な物語を女のリクツで誤読」してる人の例を挙げると、
『キャンディ・キャンディ』のステアが志願兵になって出征した挙句、戦死するという展開に関するネット上の感想で、志願兵になった理由を「キャンディに対する恋心を忘れるため」とかいってるのを読んでズコーっとコケた事がある。いや、アンタどんだけ恋愛中心脳なの・・・。いい大人なら、もうちょっと近代史の知識を身に着けようよ。
「何で態々志願したのか分からない」とか言ってる人も結構見るし。戦争って遠くなったんだな〜。次はキャンディ論書くか・・・)


訃報におもふ 27/05/09

栗本薫逝去。
私の実兄も、数年前に膵臓癌で40代で亡くなっている。
兄の場合は進行が早く、闘病期間は短かったが、癌患者を抱える御家族の苦労の一端は分かっているつもりだ。
一人の人間の死に対しては、一社会人として真摯に御悔やみを申し上げる。

とはいうものの、私は「文筆家・栗本薫/中島梓」に関しては、既に十年以上前に「終わってる人」という評価を下しているし、訃報に接したところでその評価は変わらない。

彼女があと十年永らえたとしても、グイン・サーガがどうにかなっていたとは到底思えない。よしんば完結できていたとしても、あの数十巻に及ぶ作者の自己愛タレ流しのグダグダな文章の評価が今更底上げされる訳でもなかろう。

それにしても、不思議でならないのだが。
「ライフワーク」を抱えた作家が自分の余命に関して悟るところがあったならば、せめて一番重要なテーマに関しては伝えておきたい、生きた証として遺していきたいと、出来うる限り話を先に進めるのではなかろうか。実作家ではない私の素人考えか?

まぁ、『わが心のフラッシュマン』(1988)にブチ切れて作家としての見識や人間性に見切りをつけ、グインを新刊で買ったのは『光の公女』が最後。
その後何巻だったか忘れたが、地の文に「シチュエーション」というカタカナ語が1ページ内に二回も出てきたのに「金とっていい文章じゃないだろコレ」と立ち読みさえ止め、更に数年後に基本設定がネタばらしされた80巻台を久々に立ち読みし、「なんだこの厨臭い侵略ものB級SFは」と愛想のカケラも尽きて今に至る・・・という私なので、グインや魔界水滸伝が未完で終わったとて別段惜しいとも思わないのだが。

しかし・・・あれだね。なんだかんだで稼ぎ頭のグインが終わりということは、ハヤカワSF文庫JPも実質終わり、海外SFも・・・?
「SF者」とは不倶戴天だが、面白いSF小説は好きなので、色々と心配だ。
てか、ミステリ文庫の方はもっと心配な訳なんだが。

*オマケ* そういえば、私はNARUTOという作品自体は然程好きでもないのだが、大蛇丸とカブトだけは偏愛していたりする。なんでかなーとよくよく考えたら、私はあの二人の人間関係に、「あるべきナリスとヴァレリウス」を幻視してるとこがちょっとあるのかも知れん。あれくらいの描写バランスでやってくれてりゃ萌えられたかもしれないのに(ま、基本的にクシャナとクロトワとか、モルミルスとライマンダとかのパターンに弱いってのが一番の理由なんだが)

付記)ファンだった頃に一番好きだったキャラはヴァレリウスだった。
で、長い長いブランク後に80巻台を立ち読みした際、ヴァレりんがあ〜ゆ〜扱いをされている事で、何やら「好きなカップリングの同人誌を買ったけど、キャラ解釈の方向が全然合わなくて激しくモニョる」ような感じがして非常にツラかった。・・・いや、原著作者による原典なんですがねwww
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